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100周年に向け、道筋を明確に描く3年間に

新中期経営計画のテーマは、“未来を創る”創造力

2033年度の創業100周年へと歩みを進めるなか、それまでに実現させたい「私たちのありたい姿」をGlobal Power Solution Partner、すなわち「お客様の声を聴き、ソリューションの期待に応える唯一無二のパートナーであり続けること」と定め、これをビジョンとして掲げています。
このビジョンのもと、前中期経営計画中に策定したのが、「パワーエレクトロニクスと創造力で、社会を前進させる。」という私たちの存在意義を示すパーパスです。2024年4月にスタートした新たな中期経営計画では、このパーパスを基にキャッチフレーズを「Create the Future-“未来を創る”創造力-」(CF26)としました。
この「CF26」は、私が2018年に社長に就任して以来、3度目となる中期経営計画です。基本的な方向性に大きな変更はありませんが、次世代エネルギーへの移行が本格化するなか、私たちの事業領域である新エネルギー分野に対するお客様の期待と引き合いは、日々強まっています。私たちのパワーエレクトロニクス技術が、より良い未来社会の基盤を支える重要な役割を担っていることをあらためて深く認識し、さらなる事業成長と収益性向上の実現に向けて全力で邁進してまいります。

2025年度下期からの市場好転に期待

「CF26」初年度の2024年度は、複数の大型案件により目標を大幅に上回る成果を上げた2023年度から一転、売上高254億4000万円(前期比55億6500万円減)、営業利益10億7300万円(前期比23億円減)と、大幅な減収減益となりました。前期の反動やさまざまな外部環境による影響はある程度想定していましたが、予想以上に大きく響いたのがパワー半導体の在庫調整の長期化でした。5年前のコロナ禍で、世界的なパワー半導体不足が発生した際、殺到した注文に応じて増産したパワー半導体が、いまだに過剰在庫として市場に滞留しています。2024年度には落ち着くだろうという当初の見込みに反して、在庫調整は長引きました。しかし2025年度に入り、ようやく各地域で需要回復の兆しが見え始めています。現在は、2025年度下期からの市場の好転に期待を寄せているところです。
電源機器事業では、2023年度の約30億円規模の大型特需案件の反動減に加え、主力の表面処理用電源が不振でした。引き合いや受注は例年並みの水準を確保していたものの、技術的に難易度の高い大型電源案件が複数重なったため、設計段階で想定以上の時間を要し、お客様に納期でご迷惑をおかけしたケースがあり、これも業績に影響しました。そうしたなか、非常に明るいニュースとなったのは、電源機器の保守サービス部門です。修理や点検といったアフターサービスが好調に推移し、前期比13.5%増と、過去最高の売上高と利益を達成しました。市況に左右されにくい安定した収益源として、今後、サービス事業の戦略的展開も積極的に進めていきたいと考えています。

着々と進む、生産の効率化と収益性改善への取り組み

数値的には厳しい一年でしたが、以前から進めている改革の歩みは止めておらず、その成果は着実に現れています。一つは、「付加価値を重視した受注戦略」が営業部門にかなり浸透してきたことです。中期的に見れば、電源機器事業の収益性は改善しており、成長基調を維持しています。今後も価格競争の厳しい案件は慎重に見極め、私たちの技術力をしっかりアピールできる高付加価値案件に注力することで、利益率の向上を図ってまいります。また、電源機器事業は、まだまだ提案の余地があると感じています。「受け身体質改革もまた、私が長年言い続けていることです。これからも時代やお客様のニーズを先に見越した提案を行い、計画的に製造して納品していくという姿勢を堅持したいと思っています。
もう一つ、改革の成果が見えつつあるのが「設計の標準化」です。私たちの電源機器事業は、標準品5割、特注品(カスタムメイド)5割という構成です。大型電源装置の多くはカスタムメイドであり、案件ごとに設計・製品化が必要なため、多大なコストと時間がかかります。さらに量産品ではない特注品は、品質維持も容易ではありません。カスタムメイドへの対応力でお客様から高い評価をいただいていることは十分承知していますが、効率的な設計手法を追求していくことは、私たちの「ありたい姿」である、真の「ソリューションパートナーとして期待に応え続ける」ためにも必要な挑戦です。現在、設計部門ではさまざまな標準化プロジェクトが進行中で、すでにいくつかの成功事例も生まれています。標準化のアプローチは多岐にわたり、具体的なご説明はやや複雑になりますが、たとえば無停電電源装置に使用されるパワー半導体の回路モジュールについて、これまで製品ごとに個別設計を行っていたため、多数の製造図面が存在していました。今回の標準化の取り組みにより、これらの図面を整理・統合することで、図面の種類を大幅に削減することに成功しました。
こうした標準化により、設計リードタイムは大幅に短縮されます。コスト競争力が向上するだけでなく、検査工程の効率化、品質の向上など、あらゆる面で私たちの強みとなります。営業担当者も事前に仕様を把握したうえでお客様とコミュニケーションできるため、企画提案型の営業もよりしやすくなるでしょう。たとえば、高級自動車でも見えない部分に汎用部品を使用するのと同様に、お客様の満足度を下げることなく、設計・部品の標準化を積極的に推進してまいります。まだまだ道半ばではありますが、これまでと違う成果が見えてきています。

「CF26」の目標達成に向け、“仕込み”は順調に進行中

中期経営計画の1年目にあたる2024年度は業績的には厳しい結果となりましたが、将来に向けての「仕込み」はしっかりと進められています。したがって、2年目となる2025年度の事業計画の見直しは多少行ったものの、厳しい環境下にあっても最終年度の目標水準を目指し、その達成に向けた布石を着実に打ち続けていく方針です。
まず、次世代を担う新製品の投入についてです。半導体事業では、高効率な電力変換効果とCO2削減効果により、昨今需要が急増しているSiC(シリコンカーバイド)の新製品「1700V/300A SiC-MOSFETモジュール」の開発と、設備の小型化ニーズに対応した高性能な「高速ダイオードモジュール」の開発が完了しました。電源機器事業では、私たちが国内シェア第1位を誇る表面処理分野において、従来品との互換性を維持しながら、その性能を大幅に向上させた表面処理用電源「MRT」を開発しました。これにより、さらなるシェアの拡大と海外展開を図っていきます。そしてもう一つ、ぜひご注目いただきたい新製品が、モジュール型の蓄電池試験・評価用電源「S・Loop(エスループ)」です。再生可能エネルギーの普及とともに、成長著しい蓄電池市場では、蓄電池の評価ニーズが急速に高まっています。「S・Loop」は、さまざまな評価試験に対応できるモジュール型の画期的な製品です。開発には相当な困難が伴いましたが、今のところ競合他社に類似品はなく、私たち独自の強みを発揮できる製品として、まずは国内市場から提案を開始しています。これらの新製品については、今後、売上に大きく貢献することを期待しています。
次に、「CF26」の3年間で64億円を計上している投資計画ですが、こちらも予定通り進捗しています。成長分野に30億円、生産性向上に24億円、経営基盤強化に10億円を配分し、2024年度は主に半導体工場への投資を集中的に実施しました。現在も引き続き、設備投資を行っており、生産能力の増強と自動化を推進し、それに合わせた製品のモデルチェンジも計画しています。従来品の増産だけでなく、QCD(品質・コスト・納期)の改善も目指したいと考えています。一方、電源機器工場への投資は、生産能力を上げるため、長年使用してきた各種設備の更新を進めていく予定で、今年度から本格化させます。
経営基盤強化の投資では、基幹システムの更新を実施しました。全社的な業務プロセスを最適化することで、業務全般の効率化と経営の高度化を図っていきます。しかし、最も重要な投資は人的資本への投資です。いつも思うことですが、実務の中核を担う課長・部長クラスは、会社の実力そのものです。組織全体の底力を高めていくためにも、幹部候補としての研修などには、今後も積極的に投資をしていきたいと考えています。同時に、私たちの競争力の源泉である技術人材の育成も、引き続き強化しなくてはなりません。当社のような高度な専門性を要するパワーエレクトロニクス分野では、即戦力の確保は困難です。そのため、長期的な視点でしっかりと育成を行うとともに、今後も風通しの良い、明るい職場環境整備に努め、エンゲージメントの向上に取り組みたいと考えています。

他社との協働や共創が新たな機会を生み出す

私たちは2033年度の創業100周年を迎えるまでに、売上高500億円達成という目標を掲げています。100周年まであと8年。この期間を「ホップ・ステップ・ジャンプ」と3つの中期経営計画で捉えると、「ホップ」の「CF26」では、500億円企業への道筋を明確に描き、実現可能な戦略を組み立てていくことが重要です。
とりわけ海外事業展開は、避けては通れない重要なテーマです。電源機器事業では、表面処理用電源のアジア展開に力を入れており、今後はアジア向けのローカルモデルを開発し、韓国やマレーシア、インドネシアなど、すでに実績のある地域から営業拠点を広げていく計画です。また半導体事業では、性能の良さで高い評価を得ているSiCを欧州と中国で本格的に展開させていきます。SiCなどの半導体製品を入り口としてお客様と信頼関係を築き、その後、電源製品も含めた包括的な取引に発展させることを目指しています。さらに、過去最高の売上高を記録した電源機器保守サービス部門についても、長期修繕契約の受注拡大や補修サービスの海外展開を検討してまいります。
今後さらに加速するだろうと見ているのは、他社とのコラボレーション案件です。私たちの強みは、パワー半導体と電源機器の両技術を深く理解し、統合的なソリューションを提供できることです。両技術に特化した専門メーカーだからこそ、さまざまな要求に対してスピード感と柔軟性をもって対応できるという競争優位性があります。パートナー企業からもその点をご評価いただき、現在はチーム一丸となって共同開発を行っています。
また、事業内容そのものが環境負荷の軽減に寄与する当社ですが、脱炭素社会の実現に向け、より大規模な社会課題解決に貢献するためには、他企業との協働や共創が不可欠だと感じています。今後、そのようなコラボレーションやプロジェクト案件が本格的に進展すれば、将来的には半導体事業、電源機器事業に並ぶ新たな事業セグメントが創出されるかもしれません。付加価値の高い安定した収益基盤として、私自身も楽しみにしながらその可能性を視野に入れていきたいと考えています。
コーポレート・ガバナンスについては、引き続き強化を図っていきます。女性管理職の登用やダイバーシティ&インクルージョンを推進するとともに、現在、社内の会議体の見直しも進めています。十分な議論が行える運営体制にすることで、より多様で活発な意見交換を促し、透明性が高く実効性のある意思決定プロセスを実現させたいと考えています。

社会を前進させる使命のもと確かな成長をこれからも

100周年という節目に向けては、自己資本利益率(ROE)10%以上という目標も掲げています。
しかし、2024年度は一昨年のROE約13%、PBR(株価純資産倍率)約1倍から後退しました。数字だけを見れば、近づきつつあった目標から再び遠ざかったように感じられますが、単年度では業績の振れ幅が生じるものです。大切なことは、中期経営計画の3カ年という期間で捉えた際に、着実に成長していると皆様に実感していただけるような企業姿勢と収益をお示しすることだと考えています。
「ホップ・ステップ・ジャンプ」と申し上げたとおり、「CF26」初年度はいったん腰をかがめる時期でもありました。困難な状況の中でも、設計の標準化推進、新製品開発の完了、計画的な設備投資の実行など、将来に向けた重要な「仕込み」を着実に進められたことに確かな手応えを感じています。こうして築いた基盤が、今期以降の業績回復と成長にどのような効果を発揮するか、私たちの進化する姿にぜひご期待いただきたいと思います。
私たち三社電機グループは、これからも「パワーエレクトロニクスと創造力で社会を前進させる。」というパーパスのもと、すべてのステークホルダーの皆様から信頼され、必要とされる唯一無二の存在として成長を続けてまいります。

株式会社三社電機製作所

代表取締役社長
𠮷村 元

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